室岡ひろしの最新情報

LDP新潟政治学校2025入校式・第1回講義@新潟駅南プラーカ3ニーノ会議室に参加させていただきました◎

2025年9月3日 / Hiroshi Murooka / ブログ

岩村校長、河原井青年局長からテーマを「地域資源」としたことから地元の魅力発見につながるような実り多き機会にしていただきたい旨のご挨拶をいただきました。また、講演会では「地域課題を突破する地域資源とは」と題して、women farmers japan株式会社(wofa)の佐藤可奈子氏よりお話いただきました。ワークショップでは、地元の地域資源の魅力とコラボの可能性を模索し、小千谷の錦鯉の認定証を加茂和紙でつくることができないか?佐渡はクマやイノシシなどがいないため、安心して山と親しむことのできる環境を全県と連携してもっとPRできないか?など様々なアイデアが出ました。

佐藤可奈子氏の講演概要は下記です。
▼women farmers japanの事業と活動
women farmers japanは、十日町で農家女性を中心とした干し芋づくりに取り組んでいます。サツマイモを全量買取を行うことで、農家の冬の仕事場を確保しています。単に農作物を生産するだけでなく、農業を通じて女性たちが「一人の社会人として、尊厳をもって力を発揮できる場」をつくることに重きを置いています。佐藤氏は「家族経営の中で、感情的になって力を発揮しきれない」という経験から、ビジネスとして自立し、成長し高めあう「コミュニティ」の重要性を感じたそうです。

▼逆境を乗り越えて見出した理念
中越地震の復興ボランティアをきっかけに、2011年に池谷集落に移住・就農。干し芋づくりを始めたものの、加工所の建設計画が地元の反対に遭い、「何のために農業をしていたんだっけ?」と、自分の目的を見失ってしまった時期があったといいます。この経験から、「ハコ(施設)ができても、もっと見つめなければならないことがある」と気づき、ビジネスコンテストで優勝して得た資金を元に、以下の5つの行動指針を掲げ活動を強化したそうです。
1.同じ痛みを持つ戦闘集団を作る
2.一人で戦わない
3.生きた言葉で進める
4.意地では続かない。仕組みで
5.数字を言葉にして語れるように

▼地域資源としての「さつまいも」
佐藤氏の師匠がつくった、とにかく美味しいさつまいもが原点にあります。豪雪地である十日町では、水はけが良い土地で美味しいさつまいもが育ちます。さらに、豪雪地ならではの地形のおかげで、土壌の雑味がなく、「芋の味がする」最高のさつまいもができるそうです。この土地固有のテロワール(環境要因)を活かし、雪の力で熟成させ、さらに手作業で丁寧に加工することで、一般的な干し芋にはない、ねっとりとした食感と深い甘みをもつ「丸干しの干し芋」が生まれます。また、皮や実などの廃棄されがちな材料を活用して、「干し芋ベーグル」もアップサイクル商品として開発・販売されています。機械化が難しい繊細な作業が多いからこそ、農家を労働者ではなく「職人」へと昇華させられるという、人の価値を高める可能性を秘めていると語られました。

▼成長し高めあうコミュニティづくり
メンバーが自分自身の「無能だ」という負のスパイラルから抜け出し、主体的に力を発揮できるようになるために、コミュニティを重視した活動をされています。「私は何者として、何をなすのか?」という問いに向き合い、自分の人生の主導権を握ることを大切にしています。また、コーチングのプロなどをメンターに迎え、対話を通じて内面の課題を整理する取り組みも行っています。「ありがとうワーク」や「あだなで呼び合う」といった独自のワークを取り入れ、心理的安全性の高いチームをつくり、メンバーの成長を促しています。これは、起業家の思考プロセスである「エフェクチュエーション」に通じるものです。目標から逆算するのではなく、手元にある資源や能力からスタートし、可能性を広げていくという考え方で、これによりメンバーの自己肯定感を高め、コミュニティ全体の成功につなげています。

▼コミュニティを支える「生きた言葉」
事業を成功に導くために「生きた言葉で進める」ことを指針の一つとして掲げています。これは単なる情報伝達にとどまらず、個人の内面やチームの関係性をより良い方向へ導くためのコミュニケーションを指しています。「私は、無能だ」という自己否定のループに陥りがちなメンバーに対して、「どうしたの?」「どうしたいの?」「わたしにできることある?」という3つの言葉を投げかけ、主体的に問題解決に向き合うよう促しています。これは、相手の抱える苦しさに寄り添い、共に解決策を探すという、共感をベースにしたコミュニケーションの具体例と言えます。

▼成長を促すコミュニケーションの仕組み
メンバーの内面的な課題を整理し、成長を促すために、以下のような取り組みを行っています。
メンター制度の導入: コーチングのプロなどをメンターに迎え、メンバーが抱える内面的な課題の整理をサポートしています。
1.「チェックイン」: 草刈り直後に会議に参加するなどのバタバタした心境を落ち着かせるために、冒頭に「いま、どんな気分?」と問いかけ、参加者のコンディションを共有します。これにより、心を一つにして次の時間へ向かうことができます。
2.「1対1の対話」: 定期的に1on1の時間を設け、個々のメンバーと向き合うことで、より深い信頼関係を築いています。
3.「ありがとうワーク」: 参加者同士で感謝の気持ちを伝え合うワークを通じて、ポジティブな雰囲気を醸成しています。
4.「噂のワーク」:当事者が背を向けている中で、当事者以外がその人の良い噂を皆さんで言い合います。
5.「あだなで呼び合う」: あだ名で呼び合うことで、リラックスした関係性をつくり、発言しやすい環境を整えています。
これらの取り組みは、メンバーが安心して自分の考えや感情を表現できる心理的安全性の高い環境を作り出すための工夫と言えます。

▼幸せを感じるから成功する
成功と幸福感の関係について、「幸福感、幸せを感じているから成功する」という考え方を強調しています。ポジティブな思考を持つことで視野が広がり、チャンスを掴みやすくなるという考え方です。そして、そのポジティブなマインドは、日々の感謝や言葉の力によって育まれます。メンバーが「自分の人生の主導権を握れるようになること」を大切にしており、そのために「価値観と行動が一致する」ようなコミュニケーションを重ねることで、それぞれが本来持っている力を発揮できる場を生み出しているのです。

▼まとめ
佐藤氏は、農業とビジネス、そしてコミュニティという3つの要素を掛け合わせ、地域に住む女性たちが生き生きと働ける仕組みをつくり、地域課題の解決に取り組んでおられることを認識しました。また、地域資源であるさつまいもと雪の力を最大限に活かし、それを育む人々の能力や尊厳を大切にする、まさに「地域課題を突破する」取り組みだと感じました。佐藤氏の事業が単なる干し芋づくりではなく、コミュニケーションを軸にした「人づくり」を中核に据えていることが良くわかりました。

貴重な機会を本当にありがとうございました!