室岡ひろしの最新情報

佐渡市議会政風会の会派視察として兵庫県明石市・神戸市・洲本市を視察してきました◎

2025年11月14日 / Hiroshi Murooka / ブログ

佐渡市議会政風会の会派視察として兵庫県明石市の子育て支援策を視察してきました◎

 

視察先:兵庫県 明石市 こども局 子育て支援室 子ども政策課

 

【説明】

明石市は、大阪・神戸等のベッドタウンとして、人口増加に伴い市税収入が2010年の391億円から2024年には449億円へと14年間で58億円増加している。泉前市長の「所得制限や自己負担なしこそ平等」という理念に基づき、誰もが必要とするベーシックサービスを無償で提供することで、「市民から預かった税金を付加価値をつけて返す」という考え方を実行している。政策は現金給付ではなく現物給付で実施されている。

主な子育て支援策は、「5つの無料化」として推進されており、これは2019年に佐渡市議会市民厚生常任委員会で視察した医療費、保育料、遊び場に加え、2020年以降におむつと中学校給食費が無償化され、合計5つの柱となっている。また、第2子以降の保育料無償化は、多子世帯の増加を目的としている。さらに、子どもたちが自主的にカリキュラムを決める公設民営型フリースペース「第三の居場所」を設置し、子どもの居場所確保にも注力している。

 

【質疑】

財源確保については、既存予算の徹底的な見直しと優先順位の再整理、子育て施策への「将来への先行投資」としての財源シフトが基本であると回答された。歳入面では、市税収入の収納率向上に加え、人口増による地方交付税の確保、ネーミングライツ導入、ふるさと納税獲得、未活用地の売却などを複合的に実施している。歳出面では、公共施設の配置適正化や業務効率化によるコスト抑制が図られている。

政策効果については、「明石に住んでよかった」「子育てに前向きになれた」という市民の声が多数寄せられており、数値面でも2010年からの15年間で主に子育て世代を中心に16,000人の人口増を達成している。また、合計特殊出生率は1.65(2023年)であり、全国平均1.20を大きく上回る効果が見られている。直近の人口増は、社会増によるものであることも確認された。

2020年からのおむつ定期便と中学校給食費の無償化は、新型コロナウイルスの影響を直接受けて開始されたものではないが、コロナ財源の一部を活用し、ゼロ歳児の見守りを重視する中で、移住者への早期支援につなげる目的も含まれている。第三の居場所は、不登校児童・生徒の行き場がないという課題認識から、丸谷現市長の議員時代の取り組みが実を結んだものであり、そこで過ごす時間は教育的にも問題がないとして基本的には出席扱いとなっている。今後のビジョンとして、若者世代の施策の充実とそれに伴う財源確保の必要性が示された。

 

【所感】

明石市がベッドタウンという好立地に加え、泉前市長、丸谷市長が掲げる「こどもは社会の宝」という明確なビジョンと強いリーダーシップのもと、子育て支援策を推進し、実際に人口増という成果につなげていることに熱意を感じた。2019年視察時よりも子育て支援策が「5つの柱」へと進化しており、そのたゆまぬ努力と継続的な財源確保への挑戦は評価に値する。少子高齢化という最大課題を抱える佐渡市にとって、明石市と環境が大きく異なることは否めないが、「納税者が報われる政策」という理念や、既存予算の徹底した見直しによる財源の確保、そして多子世帯出産成長祝金事業のパワーアップなど、佐渡市における子育て支援策全体の改善に向けて、学びを活かした不断の努力が必要であると痛感した。

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佐渡市議会政風会の会派視察として兵庫県神戸市の防災減災対策や阪神淡路大震災の復興後のまちづくりを視察してきました◎

 

視察先:兵庫県 神戸市

 

【視察】

阪神・淡路大震災記念、人と防災未来センターの訪問では、1995年1月17日5時46分52秒に発生し、マグニチュード7.3、最大震度7を記録した未曾有の都市型大災害の教訓を伝え、有意義さを実感した。平日にもかかわらず看護学生や小中学生など多くの来場者があり、ボランティアによる語り部や地震実験、VRによる津波シミュレーションなど、五感を使った防災・減災意識の醸成が図られていた。

復興後のウォーターフロント再開発の好事例として、ジーライオンアリーナ神戸周辺施設を視察した。最大観客数1万人を誇り、多目的イベント開催を可能とするアリーナは、震災から30年を経て復興した神戸のコンパクトシティとして、再開発のモデルケースになっている。また、メリケンパークを発着地とする江戸時代を想起させる御座船に乗船し、明石海峡大橋、神戸空港、ポートアイランド、三菱重工業のドックなど、港湾都市のダイナミズムを体感し、佐渡における遊覧観光の可能性について思いを馳せた。

その他、安藤忠雄氏設計のこども本の森神戸や兵庫県立美術館、元生糸検査場のKIITO(三宮図書館)、元銀行の神戸市立博物館、30階建ての神戸市役所なども視察した。組積造による石造りの古い街並みは、電線地中化もされて端正な素晴らしい景観を形成しており、それが現代風にお洒落にリノベーションされている点に感銘を受けた。

 

【所感】

神戸市は、横浜と並び交易で栄えた歴史を持ち、港町としての品格と居心地の良さを併せ持つ都市であると感じた。人と防災未来センターでの視察を通じて、阪神・淡路大震災の教訓の風化を防ぎ、防災・減災意識を継続的に啓発することの重要性を再認識した。今後発生が予測される首都直下地震や南海トラフ地震に備え、被害を最小限に食い止めるための平時からの準備が必須である。また、首都圏が機能を失ってしまう際のリスクヘッジとして、大阪・神戸といった関西圏が副首都としての代替機能を果たす必要があり、企業本社の関西移転や回帰は不可欠であると考える。しかしながら、減災の視点から考えると、タワーマンションや都市型高層ビルの乱立といった極端な都市化は、大規模災害時の被害を極大化させるリスクを孕んでいる。このことは、佐渡も含めた日本の地方のあり方こそが、リスクを最小限に抑える地に足のついたライフスタイルを提供する場であるという認識を深めることにつながった。引き続き、佐渡市において防災・減災対策を最優先で推進していくべきであると改めて決意した。

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佐渡市議会政風会の会派視察として兵庫県洲本市(淡路島)の域学連携事業を視察してきました◎

 

視察先:兵庫県 洲本市 企画情報部 企画課 政策調整係

 

【説明】

洲本市は、淡路島において淡路牛や玉ねぎなどのブランド力を高め、洲本温泉の観光人気も維持しているが、毎年約600人の人口減少が続いており、高校卒業後の若者の島外流出が主要な課題である。この課題に対応するため、「域学連携事業」に重点的に取り組んでいる。事業の推進にあたっては、「課題解決」という上から目線ではなく、学生が「やりたいことをやってみる」という「バンカランカの精神」(淡路弁の「遊ばんか?」「学ばんか?」「やらんか?」を掛け合わせた造語)を重視している。学生の活動を単なるアイデア出しで終わらせず、補助制度や支援策を講じることで若者の成功体験創出に注力している点が特色である。具体的な事例として、建築学生による空き家・空き店舗のセルフリノベーションや、龍谷大学による自家消費型小水力発電施設の設置、高校の空き教室活用などが行われている。また、学生の無料滞在拠点を島内6か所に設けている点も、活動を後押しする重要な施策である。

 

【質疑】

「バンカランカ」は造語であり、チャレンジ精神を醸成するポジティブな淡路弁をもじったものである。この活動を島外の学生に知ってもらうため、令和2年度に国の補助金を活用してポータルサイトを整備した。

ため池ソーラーについては、島内10数か所に設置されており、平坦でため池が多い淡路島の地理的特性を活かした取り組みである。水冷効果により発電効率が落ちにくいという優位性があるが、コストは地上設置型よりも高い。佐渡でも可能性のある再生可能エネルギー活用法であると認識された。

竹が豊富な佐渡の状況を踏まえ、メンマサミットについて質問したところ、竹の活用が域学連携でも人気のジャンルであり、バイオマスタウン構想にも組み込まれているとのことであった。

域学連携の進め方としては、受け入れに寛容な人材を辛抱強く発掘し、好事例をつくって周囲を巻き込んでいくことが重要である。また、学生の活動は移住対策と意識させると「しらけてしまう」ため、まずは活動を楽しんでもらうことを最優先としている。学生には洲本市への移住だけでなく、中央省庁や大企業で活躍してもらうことが、巡り巡って洲本市への貢献につながるとの考え方をご共有いただいた。

 

【所感】

明石海峡大橋の開通により、もはや地理的な意味での離島ではないものの、淡路島が「国生みの島」としての歴史と文化を大切にし、温故知新の島づくりを推進している姿勢に、強い力を感じた。

洲本市が推進する「バンカランカ」の精神は、若者の主体性やチャレンジ精神を尊重し、それを公的な支援策で支えることで成功体験へとつなげている点で、非常に先進的かつ有効なアプローチである。

佐渡市においても、年間を通じて多くの大学が関わっているが、定住に繋がる事例が少ないという共通の課題がある。洲本市の事例から、地域おこし協力隊や学生の誘致・受け入れにおいては、過度に「移住」という結果を期待するのではなく、まずは彼らが充実した活動を通じて地域に好感を持つことに注力し、その経験が将来的に島内外での活躍へと繋がるという長期的な視点で人材育成を進めるべきであると再認識した。

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佐渡市議会政風会の会派視察として兵庫県洲本市(淡路島)のDX推進策を視察してきました◎

 

視察先:兵庫県 洲本市 企画情報部 DX推進課 DX推進係

 

【説明】

洲本市では、国が推進するガバメントクラウドの導入に取り組んでいる。ガバメントクラウドとは、AWS、Azure、OCI、Google Cloudといったパブリッククラウド上に、デジタル庁の統制のもと、自治体の基幹系業務システムを構築・運用する環境である。既存システムをクラウドへ移すことを「リフト」、国の標準システムへ移行することを「シフト」と呼ぶ。洲本市では、このシフトとリフトを並行して実施しており、大規模かつ困難な作業となっている。ガバメントクラウド利用は、2023年度の窓口DXSaaS構築から始まり、2024年度の早期移行検証事業への参加を経て現在に至る。国は、システム標準化を法律で定め、ガバメントクラウドの利用検討を義務付けている。これは、各種DXによる業務改善の基盤であり、避けて通れない取り組みである。

 

【質疑】

ガバメントクラウド導入による業務効率化については、サーバーの維持管理は効率化されたものの、相対的にネットワーク管理業務の重要性が増したと回答された。運用コストは現時点では住基・税システムで2.9倍となっており、改善の余地が大きい。ガバクラ利用料削減に注力し、見積を大幅に精査することで費用削減を実現し、デジタル庁から好事例として評価されている。

短期間での導入は、デジタル田園都市国家構想交付金事業を当該年度で完成させるため、回線敷設を急ぐ必要があったためであり、短期間での構築が費用削減に直接つながったわけではない。

デジタル人材の確保については、都市部から離れているため難しく、内部職員向けの研修の実施や、DX推進課職員の外部研修への積極参加により専門性向上に努めている。ガバクラ利用料の精査など、事業者と対等に交渉するためにも、デジタル人材の重要性がますます高まっており、その確保が大きな課題である。

DX全体としてのAI導入については、現在試行段階であり、管理職にアカウントを使えるようにするなどして活用を進めている。洲本市の込み入ったデータ分析には、機密保持の観点から行政専用のAIを次年度から導入する予定である。DXは、窓口業務の流れを変える必要があり、書かない窓口やオンライン申し込みなど、できるところからペーパーレス化を進めているが、職員の既得感情という意識改革が大きな課題である。

市民へのメリットのアピールについては、公式LINEや各種アプリケーションの活用などを2年前に実施しているものの、住民にはなかなか実感してもらえていない。職員自身にも理解が浸透しきれていない面がある。ランニングコストの上昇を市民に説明する責任があるため、今後は地域通貨の導入なども検討しながら、住民の実感を伴うDXを推進していく必要がある。

 

【所感】

洲本市議会では10年ほど前からタブレットを導入するなど、自治体DXに対する意識が高い。ガバメントクラウドの導入は、システム標準化という国の潮流であり避けられないものであるが、現時点での運用コスト増やネットワーク管理業務の増加といった課題が明らかになった。特にガバクラ利用料の精査を職員自らが行うことの重要性は、今後の佐渡市におけるDX推進、特にコスト管理において大変参考になる視点である。

AIについては、行政の秘密保持という観点から、外部サービスではなく行政専用のクローズドな環境での活用を目指している点も、佐渡市がDXを進める上で慎重に検討すべき事項であると再認識した。離島である佐渡こそ、物理的な制約を乗り越え、ペーパーレス化や書かない窓口対応など、生活を劇的に改善するDXを大胆かつ着実に推進していく必要があると改めて認識した。